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名誉会長挨拶

president 近年、日本の大学教育は社会からの要請を受けて、教育方法や教育内容の改革をはかってきました。本学教職員が大学教育のあり方を考える際に貴重な手助けとなるのはご父母・保証人のみなさまのお声です。そこで獨協大学では1986年から父母懇談会を開催し、学生の様子を知っていただくとともに、みなさまのご意見やご要望を直接お伝えいただく機会としてきました。そして2008年には、その連携をさらに深めるために「獨協大学父母の会」が設立されました。それ以後、「父母の会」からは、就職活動や奨学金事業の支援、ゼミ合宿やゼミ論文集への助成、キャンパス内の備品整備など、多岐にわたるご助力を賜りました。またイベントや機関紙の発行などを通して、会員相互の交流も活発になされてきました。

「学生時代」という言葉は、どこか面映い甘酸っぱさを思い起こさせます。この言葉で多くの人が連想するのは、講義風景ではなく、若者たちが語らい、スポーツや文化活動などに熱中する経験でしょう。キャンパスで育まれた友情は、卒業後も一人一人の人生の貴重な支えとなります。「父母の会」からは、サークルや部での活動、学生同士の交流や協働、リクリエーションなど、広くキャンパス・ライフの充実のためにご尽力いただいています。サークルや部活動、自主的な調査活動のすぐれた成果を助成、顕彰する「学生チャレンジ支援プログラム」はその一つです。また大学生活を通して、若者たちが豊かな情操や創造性を育むことは、これからの社会の成熟のために必須の要件です。「父母の会」の活動の一端として、芸術・芸能鑑賞企画、美術館・博物館などの文化施設利用など、学生が様々な文化資産に触れる機会も作っていただいています。

 木々が集まって、そこに多様な生命が息づく森。その森は長い年月とともに、環境に適応しながら、少しずつ姿を変えていきます。森と同じように、大学も多くの人間が、多様な立場から集まる有機的コミュニティです。「父母の会」もまた、獨協大学という有機体の重要な一部です。社会情勢の変化や歴史的変遷とともに、学問のあり方は変わっていきます。私たちは今、地球環境破壊、AIの急速な進歩、国際紛争といった変動の時代を生きています。「大学は学問を通じての人間形成の場である」という建学の理念を継承しながらも、時代の要請に応じた学問と人間形成の意味を探っていく必要があります。この時代の転換点にあって、獨協大学は新たな未来へと進化の歩みを進めてまいります。その歩みを、「父母の会」のみなさまも、見守り、励まし、引き続きご支援いただけますよう、お願い申し上げます。

獨協大学父母の会名誉会長・獨協大学学長 前沢 浩子