2025年度 父母交流会(学内会場)「みんなで歌おう!」ベートーヴェン《第九》~獨協大学から世界へ響け 歓喜のメッセージ~(1)

 獨協大学父母の会では、会員相互の交流促進を図ることを目的に、父母交流会を開催しています。2025年度は2026年3月15日(日)、獨協大学大講堂において、獨協大学父母の会主催父母交流会(学内会場)「みんなで歌おう!」ベートーヴェン《第九》~獨協大学から世界へ響け 歓喜のメッセージ~を開催。第1部では外国語学部ドイツ語学科の矢羽々崇教授による講演会を実施し、第2部では参加者全員で『第九』を歌って心を通わせました。その後、懇親会で会員相互が交流を深め、2025年度の父母の会を締めくくりました。

第1部 講演会 ≪第九≫合唱『歓喜の歌』のメッセージとは?

講師:外国語学部ドイツ語学科 矢羽々崇 教授
1962年岩手県盛岡市生まれ。ミュンヘン大学哲学部修了(Magister Artium)、上智大学大学院文学研究科ドイツ文学専攻修了。博士(文学)。1994年より獨協大学外国語学部ドイツ語学科で教鞭を執る。2012~2015年度国際交流センター所長、2016~2020年度図書館長。専門は近現代ドイツ文学。主著に『日本の「第九」合唱が社会を変える』(白水社)、『第九 祝祭と追悼のドイツ二〇世紀史』(現代書館)、『「歓喜に寄せて」の物語: シラーとベートーヴェンの「第九」』(現代書館)。NHKにてドイツ語講師(ラジオ:2000〜2001年度、2007〜2008年度、テレビ:2008〜2009年度)。

 『第九』の第4 楽章に使われている詩は、『歓喜に寄せて(An die Freude)』といいます。東日本大震災が発生した2011年の年の瀬、「サントリー1万人の第九」というイベントが行われました。あの震災の後に、なぜ歓喜の歌を歌ったのでしょうか。

 『第九』に取り入れられたシラーの『歓喜に寄せて』という詩は、歌うことを前提に作られました。大勢で歌って一体感を生み出すことが初めから意図され、実際に飲みの席で賑やかに歌われていたといいます。

 詩の内容を見てみますと、第1 節には「喜びの力が“再び”結び合わせる」とあります。この“再び”という表現の背景には、「かつて神々と人間と動物が手を取り合う黄金時代が存在した」という当時の思想がありました。その調和が失われ、分断された近代社会で、シラーは歓喜の力で世界を “再び”統一しようと訴えたのです。この詩のなかでは、歓喜を通じて世界の結びつきの回復を願いながら、兄弟愛、平等、自由といった理念を全体に盛り込んでいます。

 一方、第9節には死や別れといった、一見すると歓喜とは相反するイメージが含まれました。ただ、よく見ると「希望」や「恩寵」といった言葉が一緒に使われ、ここでの「死(=死者)」は単なる悲しみではなく、「生(=生者)」とのつながりを意識するために想起されたことがわかります。ベートーヴェンはこの節を取り入れてこそいないものの、シラーが訴えた生と死のつながりを意識して、人々のことを想い『第九』を作曲したのでしょう。

 『歓喜に寄せて』は祝賀の席はもちろん、死者を想う追悼の場面でも、過去と現在と未来をつなぐ役割を担ってきました。人々は生と死を超えてつながり、ひとつになれる。『歓喜に寄せて』には、そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。



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