2019年2月9日(土)父母交流会(学内会場)を開催。獨協大学非常勤
講師 山根一眞先生による講演「ダイナミックな科学技術の挑戦と日本の力」が開催されました。
交流会のあとは懇親会を開催。参加した126名のご父母・保証人は美味しい食事とともに興味深い講演の感想を交わすなど交流を深め、盛況のうちに終了しました。
[講演]
ダイナミックな科学技術の挑戦と日本の力
山根一眞 先生 (獨協大学国際環境経済学科非常勤講師)
1972年獨協大学外国語学部卒業。ノンフィクション作家。獨協大学非常勤講師。福井県年縞博物館特別館長。情報の仕事術、宇宙・深海などの先端科学技術、地球環境問題、生物多様性、災害・防災の分野で取材・執筆活動を継続。
ベストセラー『小惑星探査機はやぶさの大冒険』は渡辺謙主演で映画化(東映)されるなど著書多数。最新刊は『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』、『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』(中国語版出版予定)。
NHKの外部キャスターのほか、北九州市博覧祭、愛知万博、国民文化祭福井、福井国体2018でプロデューサーもつとめた。
JAXA客員、理化学研究所名誉相談役、福井県文化顧問、日本生態系協会理事、日本文藝家協会会員。
生命の起源を知る
自分の目や髪や皮膚、身体はどうやってできたかを考えたことはないですか?では私達の祖先は、生物は、地球は…と考えていくと、生命の起源は宇宙に辿り着きます。「私達は何者なのか」を知るためには宇宙を知る必要がある。これは天文学の最も基本的な問いかけです。
この問いは、かつては哲学や思想、文学の課題でした。今は、科学の最先端の課題になりました。宇宙と同時に深海でも生命の起源を知るために様々な研究が行われていて、日本はそこでも最先端にあります。
世界に羽ばたく日本の技術
国際協力で生まれた、チリの標高5,000m、アタカマ高原にある「アルマ」という人類史上最もすごい電波望遠鏡(全66台)には、日本の技術がたくさん投入されています。例えば宇宙からの電波を漏れなく集めるために、表面の誤差を25ミクロン以下で実現したパラボラアンテナや、チリの過酷な寒暖差で、膨張・伸縮するアンテナのゆがみを自動で補正するシステムなどがあります。そうしたとてつもない技術の塊でできているからこそ、素晴らしい発見ができるんです。
深海6,500mの世界
宇宙と同時に深海でも研究がおこなわれていて、日本はそこでも最先端にあります。日本の深海探査船しんかい6500は名前の通り6,500m潜航でき、世界の海底の90%に行くことができます。
太陽の光が届かない深海には生物はいないと思われていました。しかし調査の結果、太陽による光合成ではなく、化学合成という方法で生きる「古細菌」という生物が存在していることがわかりました。これは生物学の教科書が全て書き換えられるほどの大発見でした。古細菌は元々火星にいたものが小惑星の衝突などで飛び出した隕石に付着し、休眠状態のまま数億年かけて地球にやってきたと言われています。そして、その古細菌こそが、地球の最初の生命と考えられています。
世界標準のものさし 「水月湖年縞」
私が特別館長を務める福井県若狭町の年縞博物館には「世界のものさし」と呼ばれる水月湖年縞があります。年縞とは湖の底に数百年、数千年、数万年とかけて積もった堆積物が作り出す縞模様のことです。この年縞は一年も途切れずに7万年分堆積していて、縞を解析すると当時の自然環境や災害を、含有物を解析すると当時の放射線炭素量を知ることができます。これにより地質学や考古学での年代測定の精度は飛躍的に上昇しました。
7万年という時間は、現人類がアフリカを出て、世界に広まっていった歴史と一致しています。つまり水月湖の年縞、世界のものさしには、人類史のすべてがあるんです。
▲福井県 水月湖